待ち合わせはローソンで

ただの不安な若者です

急な坂があるから、ここまでで大丈夫。ありがとう。

お酒を飲んで大声で歌って、

可愛い女の子にどきどきすると、

悩みとか吹っ飛ぶ。

 

昨日営業の帰り、

後ろを歩いていた女の子たち。

小学校高学年くらいだろうか。

 

"だんごむし だんごむし〜♪"

と声を揃えて歌っていた。

 

何の歌かは知らないけれども、

あの楽しそうな歌声には、

同調も、嘘も、建前も、何もないように思えた。

 

僕は耐えきれなくなって、

思わず脚を止めて、

彼女たちの後ろに回った。

 

その歌声を聴き続けていると、

汗とともに、

僕を守っているいろんな鎧が

溶けて流れていってしまう気がしたのだ。

 

地下鉄の改札を突き破って、

そのままホームに降りて、

ホームも駆け抜けて、

反対側の改札を突き破って、

そのまま地上に出て、

走り続けて、

赤信号の横断歩道を突っ切って、

眩しい日光を反射させる

ガラス張りの建物に

突っ込みたくなった。

 

僕は何も考えず大学に入り、

これといってなんの理由もなしに、

会社に入った。

 

何もかも分かった気になって、

何も分からずあがく毎日を過ごしている。

 

会社では、僕の一生にとって大きな存在になるであろう出会いがあった。

 

いろいろ嫌なことがある。毎日ある。

一緒に嫌なことをしているうちに、

しばらく話していたい人が増えた。

 

僕は自分で自分の人生を選択したことがない。

 

世間体や周囲の期待、

人間としての暗黙の義務感、

そんなものに無意識のうちにとらわれて、

周りと同じような道を歩んできた。

 

そのことに気がついて、

ここ数年はもやもやしている。

 

もやもやしているけど、

これまで流れるままに進んできた道を、

否定したくはない。

 

これまで、僕が嬉しかったこと
これまで、僕が楽しかったこと
幸せだと思えたこと 

 

それは決して、僕が自力で手にした瞬間ではない。

 

小学校に通わなければ、
人と一緒に何かをする楽しみを知れなかった。

 

中学校に通わなければ、
友達と馬鹿な話をする楽しさを知れなかった。

 

高校に通わなければ、 
涙が出るほど人を好きになる気持ちを知れなかった。

 

大学に通わなければ、

こんなに醜い自分に気付いて、それごと愛することもできなかった。

 

複雑な人間社会に放り出されて、

もう今日こそ無理だ投げ出してやる、

とか思ったりしながら、

人並みに苦しんでいる今。

 

でも、大事な人たちができた。

夜風が気持ち良いと思えた。

隣で歌っているこの子と手を繋ぎたいと思えた。

 

生きたいし死にたいし生きたい。