待ち合わせはローソンで

ただの不安な若者です

70億の世界

大学を卒業したら学校の先生になろう、

と思っていた時期があった。

 

動機はたいしたものじゃない。

というかむしろ不純だった。

 

大人になりたくない、

という想いが最高潮に達した瞬間、

ちょうど職業を選択する時期に差し掛かり、

子供に最も近い場所である学校を

逃げ場所として求めたのだった。

 

教育実習に行って、

ものすごく単純な事実に気がついた。

 

ああ、先生って人間なんだ。

めんどくさいこととか

嫌なことからは

とことん逃げたいし、

生徒と話すのはめんどくさいし、

人前で笑うのは疲れるし、、、。

 

子供の頃、先生は全員が全員、

"先生"という別の生き物だった。

 

弱音は吐かない、

めんどくさいとか言わない、

人を差別しない、

いつも正しいことを言う、

 

そんな存在だと思っていた。

 

今振り返ると、そんなのもう人間じゃない。

 

"ゆとりですがなにか"というドラマで、

小学校の先生役の松坂桃李が、

生徒たちにこう話していた。

 

「大人も失敗するんです。

だから、失敗を許せる大人になってください」

 

恥ずかしながらこんな簡単なことに、

僕は大学を卒業するまで気が付けなかった。

 

誰も完璧じゃないから、

大人も子供も誰かと一緒になって、

手を取り合って生きていくしかない。

 

毎日ひとりで生きているつもりでも、

その生活には必ず誰かが関わっている。

 

それが人間が生き残るために選んだ生き方で、

人間を苦しめる諸悪の根源にもなる。

 

生き残るためには嘘ばかりつかなきゃいけない

そんな世の中が嫌いでたまらないし、

こんなことになるのならずっと子供のまま

正直な気持ちでいられた子供のままで

一生を終えたかった。

 

でも、身体は成長してしまったし

お酒も飲めるようになったし

なんとか世界の一員にならなければならない。

 

今は学校の先生になりたいと思っていない。

それは、やっぱりこの世界を愛せていないからだ。

 

"一生子供のままが幸せだぞ、お前ら"

 

先生になっても、

そんなことしか伝えられない気がする。

 

それは子供にとっても良くないと思っている。

 

子供は、

先の見えない未来を信じて、

限られた今を生きているからだ。

 

大人になったら

プロ野球選手になる、

社長になる、

綺麗な女の人と結婚する。

 

なんの根拠もないけど

そんな未来を信じるだけで

あの頃は今を全力で生きることができた。

 

だから、そんな子供と向き合う大人が

"大人はつまらない" "世界は腐ってる"

そんなことを言ってはいけない

 

たとえ世界は暗かろうが、

人間は汚かろうが、

子供には綺麗な未来を信じさせたい。

 

思い出はいつも最高であるべきだ。

将来への不安はちょっとだけ大きくなってから持てばいい。

どうせその後死ぬまで持つんだから。

 

いつか色々なことを知って、

絶望の淵に立たされても、

そこからが勝負だ。

 

そんなことを言っておいて、

僕は汚い世界を愛せていないので、

まだ先生にはなれない。

 

目の前の誰かを愛するように、

この世界を愛することができたら、

正直に、正々堂々と、

 

"お前ら、世界は楽しいぞ。

だから安心して遊んで、喧嘩して、恋しろ"

 

そう話してみたい。

 

世界を変えることが到底できないなら、

世界を愛するしかない。

 

その瞬間、僕は心から笑っているだろうか。